戻り橋 51 車争い図屏風

源氏千年紀

今年は源氏物語が生まれて1000年だそうです。世界に
冠たる日本文学の金字塔「源氏物語」は今でも日本人の
心に多大な影響を与えています。
さてその千年紀展が今日から六月八日まで、京都文化博物館で行われています。
源氏物語は文学ですから、ビジュアルとしては源氏物語絵巻が中心ではありますが、今回は源氏物語を題材にした多くの屏風が展示されました。
なかでも狩野山楽が描いた「車争い図屏風」が最高!
それはこの争いがあった場所が、なんと一条戻り橋だったからです。
ご存じのようにこの場面は、「葵」の巻、賀茂の祭=葵祭を見るために六条御息所が場所取りをしていたところに、葵上御一行が、横入りしてしまう。その場面を上空から整然とした葵上様御一行に対して、逃げ惑う御息所とおつきたちの慌てふためいた様を描いています。そのため負けた御息所は葵上にとりついてしまうのです。
年下の源氏に恋した御息所、皇太子の妃であった彼女は気位も矜持もあったわけで、年端もない葵上に負けてしまった悔しさはいかほどか・・・彼女を応援したくなりました。
狩野山楽は永徳の弟子です。(2008.04.26)

習い事は余裕のある社会から生まれます。日本は今余裕をなくしています。緊張からストレスがたまって、いろいろな事件が起こっています。また地球そのものも温暖化で余裕がなくなって、天変地異が起こっています。

小さなことですが、私の仕事は昔からの材料を使って、環境に協力してきました。これからもなるべく天然のものを使って少しでも役立てればと思っています。

さあ 今年は独楽鼠のように頑張ろう!(2008.1.1)関連記事「綜芸舎」跡書51

今年はねずみ年、銀閣寺哲学の道にある大豊神社の狛鼠、十二支の最初にもどりました。
いい年であることを願わずにはおられません。
去年はいろいろありました。
3月30.31日・4月1日には京都アスニーで第9回ひょうほゑ展を開催、多くの出品者と観覧者を得ました。
11月まつには東京表装ギャラリー拓が閉鎖、東京での足場が無くなったことはとっても残念です。
またカルチャーセンターの統廃合で、いくつかの教室が移転したり無くなったことは、文化に対する社会の変革がもたらした歪みではないでしょうか。
特に朝日カルチャーセンターの統廃合が目立ちました。文化人の新聞といわれる朝日新聞頑張ってほしいものです。

戻り橋 49 戊子

寒い冬も終わって、春が今年も巡ってきました。さて我が家・工房のある処は、お向かいに本田味噌、
お隣に和菓子の老舗「虎屋」の工場があります。
その工場が丹波に移転して、お隣と後ろには、日本庭園式の和菓子の発信地ができるようです。

そのため工場の取り壊しで、わが築70数年のぼろ屋がガタガタと悲鳴を上げています。なんとか持ちこたえればいいのですが・・・・。
一条通に面した虎屋の茶房もしまってしまいましたが、梅は満開です。そういえば高級羊羹に「夜の梅」(元禄時代に作られたそうです)なんてありましたね。
京都もこれから観光シーズン、お立ち寄りください。
(2008.03.18)

戻り橋 50 梅

表具は最初は体で覚えなければだめです。つぎどうするんだっけ・・・なんて思っていたら手がお留守になってしまいます。
だれでも最初はもたもたしていても、時間の差があったとしてもスムーズにできるようになります。
たぶん鈴木さんも、体で覚えた仕事を、いったんご破算して取り組めということなんでしょう。

工場のようなところと違って、我々のような小さな工房では、持ち込まれる作品は千差万別です。薄いものや厚いもの、破れたものや、滲んだもの、一つとして同じものはありません。また仕立ても様々で、何年にもわたって同じ裂を使わないように工夫しています。世界に一本しかありませんよという軸を作ろうと志しています。
そこが表具師のやりがいなのです。そして「私の仕事の流儀」です。(2007.12.16)

戻り橋 48 プロフェッショナル

「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組はとってもいい番組で、可能な限り観るようにしています。
12月18日は「仕事は体で覚えるな」というタイトルで、文化財修復の鈴木裕さんが出られました。
鈴木さんは京都の表具工房で修業されて、今は九州国立博物館の修復責任者として活躍されています。
「仕事は体で覚えろ」という職人の言い伝えを、文化財修復では千差万別なものが相手だから、体で覚えた慣れた方法で仕事をすると失敗するということを言われています。
確かにその通りだと思います。
でも別の方は、まったく同じものが二つ作れるのが職人だといいます。
これも真実ですね。
私は生徒さんが、ちっとも覚えられないと言うとき、体で覚えれば良いんですよと言います。

戻り橋 47 化学物質

現在、人の健康や生態系に有害な恐れのある化学物質が、制限もしくは禁止されようとしています。
表具には紙や裂や糊といった材料が頻繁に使われます。そして出来上がった掛軸や屏風・額は人の生活にいつも身近におかれます。
それは生活に潤いを与えるものでなくてはなりません。
伝統工芸の表具にはそういった有害な化学物質は無縁のものでありましたが、近年の近代表具では合成紙や化学糊で仕立てて、価格を抑えたり、納期を短くする傾向がありました。
私は生麩糊と生漉きの和紙を使うことを心がけてきましたが、最近の化学繊維のものには若干化学糊を使わざるを得ない場面もありました。
今回大手メーカーが、ホルマリンを含まない化学糊を作ってくれたことは朗報といえます。
和紙も今や楮の多くが中国から入ってくる現状から考えると、残留農薬の心配もしなければなりません。糊の元の小麦粉も心配です。おまけに画仙紙などは相当価格が高騰しています。
巨大な中国に、日本のような小国はどう対峙したらいいのでしょうか。
日本は自給自足に進むか、中国の意識が変わるか・・・糊を裏ごししながら考え込む毎日です。(2007.8.16)

今年も祇園祭です。11日は鉾建て、12日は曳き初め、14、15、16日は連休で、宵宵宵山、宵宵山 宵山と続き、17日は巡行。
京都の街は否が応でも、祭り一色になります。
家々には提灯が吊られ、開いた入り口や窓格子から、飾り立てられた屏風を見ることができます。
いつの頃からか、祇園祭を屏風祭りともいうようになりました。
これは室町筋の呉服屋や問屋の、「こんな素敵な屏風もってますね」と1年に一回ちょっと自慢の飾りです。
クリスマスのデコレーションを競うのと同じで、古今東西変わらない人の営みです。
最近は町家も減って、この屏風を飾るおうちも少なくなりました。
屏風は単に飾るだけのものではなく、間仕切りやいらないものを隠すものにもなり、いらないときは小さく折りたためます。
この素晴らしい移動できる巨大な障壁画、伝統技術が一杯詰まったペーパースクリーンをいつまでも残したいものです。(2007.7.12)

戻り橋 46 屏風祭
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先月のある日、郵便物が届きました。送り主を見ると知らない名前です。住所は笠間市、「ハテナ?」と思いながら荷物を開けると、兎の絵の小さな箱、そして箱の中には陶器で作った兎さん、底を見ると印が彫ってあるではありませんか。同封の何枚かの紙に、素敵な印影が押してあります。私の雅号とうさぎがいます。なんと素敵な・・・。
そして手紙には「以前お約束していた印がやっと出来ましたのでお送りします。」と書いてあります。「だれだっけ」と思いながら、パソコンの住所録見ましたがありません。手帳を調べてもありません。名刺の束の中にもありません。もちろん頭の中は消しゴム状態。
ということで一週間その陶器の印章を目の前において眺めていました。それでも思い出せないのでギブアップ、とうとうお礼状をお送りすることにしました。
「素晴らしいものを頂いてありがとうございます。恥を忍んでお尋ねします。ところであなた様はどちら様?」
返事が来ました。「一昨年の春、そちらの知り合いの方とそちらの個展でお目に掛かって、三人が卯年だと盛り上がって、わたしが篆刻をやっているから印を送ります。とのお約束だったのです。でも陶印なので時間が掛かって今になってしまいました。」とのご返事。
その文を読んで、瞬時にその場面が蘇りました。そして再度失礼したことをお詫びしました。あのときは個展期間中多くのかたとお目に掛かって、テンションが上がって、失念したのでしょうね。若いときはこんなことって無かったと思います。今はメモとHPが忘備録。
さて茨城県笠間市は笠間焼で有名な陶芸の街です。なのでこの陶印は笠間焼です。
印章は普通硬い石に印刀で彫って作りますが陶印は土をこねて後彫って、焼きますのでとっても難しいのですが、兎が野原を駆けていて素敵なモノに仕上がっています。
ありがとうございました。次の作品に押すのが楽しみになりました。
なおもう一人の卯年の箱根の方、体調悪くしておられるとか、早く元気になってください。(2007.1.1)

戻り橋 42 陶印

おまけに掛軸も普段見慣れたものではなく、筋がいっぱい入っていたり、古裂でできていたり、中には包装紙ででき
たものや、人形がぶら下がったものまであります。技術は伝統を守り、デザインは今を表す、会のモットーが生きていてうれしい限りでした。いずれ作品集を作りたいものです。
ところで入口の模型は 平安時代の外国人(といっても中国)をもてなす御殿。明日13日は中国の温家宝首相が京都迎賓館に泊まられるとのこと。1000年時を経て、中国生まれの掛軸や屏風も日本の京都で花咲いていますよ、温家宝さん!(2007.4.13)

平成19年(2007)3月30,31日・4月1日京都アスニーで開催のひょうほゑ展多くの出品を得て無事開催できました。

来られた方のほとんどの言葉、宝石箱(もしくはおもちゃ箱)をひっくりかえした様な展覧会ですね。楽しかったです!。
普通は書の展覧会や絵の展覧会を見られている方にとっては、書あり、絵あり、写真あり、切り絵あり、ポスターまである展覧会はそうざらにはお目にかかれません。
戻り橋 44 ひょうほゑ展報告

京にも春が来ました。3月3日下鴨神社の「流し雛」、今年いただいた流し雛、厄をはらって来年このみたらし川に流します。

いよいよ二年ぶりの「ひょうほゑ展」京都アスニーで開催します。
150点ほどの作品が全国各地から集まりました。
今年は私が教えた生徒さんだけでなく、公募に近いものも出品され、バラエティーにとんだ作品が展示されるだろうと期待しています。

京都はこの時期、「伝統工芸の日」の行事が目白押しです。また旧暦のお雛様の展示が各美術館や博物館で展示されますので、ぜひ春の京都を満喫しながら、ここJR二条駅に近い京都アスニーにお立ち寄りください。(2007.3.6)

戻り橋 43 京の春
CMCは「カルボキシ・メチル・セルローズ」の略だったと思いますが、天然のパルプを原料にした粘液で、ソフトクリームやつくだ煮の粘度はこれで出ています。私は最初は拓本の採拓のとき、風が強い場合や、対象物に水だけでとめられないとき、超うすい水溶液で止めます。採拓後簡単に剥がせて石などが痛みません。
そして修復の表ばりの時、以前はふのりを使っていたのですが、品質が悪くなり、お負けにすぐ腐るので扱いにくく、今はCMCを使っています。高松塚はどういう糊を使っているのかわかりかねますが、ふのりなら非常に上質な物を使用しているのだと思います。
修復にはそうとう長期間と費用がかかるということ。もう失敗しないでほしいものです。(2007.5.20)

徒然草35(2006.6.20)で高松塚古墳の人為的な損傷を取り上げました。あれから1年、解体されることになりました。ハラハラドキドキの解体です。もっと科学が進んで後の人が、「なんてばかなことするのや。もっといい保存あるのに・・・」なんて言われそうです。1000年無傷のものが、今見たい、研究したいというエゴで10年でダメになりました。悲しいですね。
日本の掛軸や屏風の修復は素晴らしい進歩があり、多くの文化財が修復され、現状よりも立派に蘇っています。その点考古学の修復は進歩していませんね。
そこでこの高松塚の壁画のために掛軸修復の技術が導入されました。この壁画を解体し動かすと必ず壁画は剥離してしまいます。そこで登場したのは、壁画の画面を小片のレーヨン紙をふなり(もしくはCMC)で貼り付けて保護し、解体する方法です。結果はこれからですからわかりませんが、このレーヨン紙やふのり(CMC)はいつも表装の修復に使われているもので、長年の実績があり、多分うまくいくと思います。
写真は張りつけのテレビ画像、下は無事切り離し、作業場でレーヨン紙を剥がす朝日新聞の写真。

レーヨン紙は不織布で紙ではありません。「飛鳥美人を紙で保護」は間違いですが、我々もレーヨン紙と言っているわけですからかまわないですね。
私はあまり他が使わなかったときから使用しています。十数年前、知合いの正倉院の技官が「新しい化学的なものは駄目だと言って使えない」と言っていたのを思い出しました。
我が工房では裏打ちには必ず使います。まず作業台の糊気や汚れを防ぎます。次に眞新しい作品の墨や絵具の滲みや剥落を防ぎます。そして古い作品の汚れを吸い取ってくれます。また破れや抜けている部分の保護をします。そして裏打ちがとっても楽にできます。
この壁画のような表ばり(古画の修復に使う技法)のとき、剥がすときにとってもはがしやすい利点があります。

戻り橋 45 飛鳥美人とレーヨン紙とCMC
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